1、 平成156月閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」において、国と地方の「三位一体の改革」の推進が盛り込まれた。当時の片山虎之助総務大臣の命名、提唱に基づくものであった。三位一体の改革においては、国庫補助負担金について概ね4兆円程度を目途に廃止、縮減等の改革を行い、あわせ地方への税源移譲を基幹税の充実を基本に行う。また、地方財政計画の歳出を徹底的に見直し地方交付税改革を行うというものであった。平成16年度予算編成においては、地方団体に対する国庫補助金について1兆円の廃止・縮減等の改革を行い、これに伴い公立保育所に係る児童保護費負担金等2,440億円が一般財源化され、義務教育費国庫負担金(退職手当・児童手当分)は暫定的に一般財源化された。税源移譲については、平成18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施することとし、それまでの間の暫定措置として平成16年度税制改正において所得税の一部を使途を限定しない一般財源として地方へ譲与する所得譲与税を創設した。所得譲与税による平成16年度の税源移譲額は4,249億円で人口を基準として都道府県及び市町村へ譲与された。義務教育費国庫負担金の退職手当及び児童手当については、今後その額が大きく変動することが見込まれることから暫定的に税源移譲予定交付金として平成16年度は2,309億円が交付された。地方交付税改革については、投資的経費(単独分)の大幅な削減を行い、平成16年度は13.5兆円で対前年度△1.4兆円、△9.5%の削減、また給与関係費の抑制を行い、地方交付税の総額を対前年度比△1.2兆円、△6.5%に抑制した。

 

2、 三位一体改革の初年度は、公立保育所に係る児童保護負担金などが一般財源化され、また税源移譲において、平成18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を行うこととしてそれまでの暫定措置として所得譲与税を創設するなど地方分権の名にふさわしい成果をあげたが、一方、地方交付税改革により、地方団体の現実の財政運営には厳しさが求められるものとなった。とりわけ、地方財政計画上の投資的経費単独分については、これまでも計画額と決算額の乖離が著しいと指摘されていたところであり、今回その規模是正を14千億円行ったことが交付税削減につながったものであるが、計画額と決算額の乖離はまだまだ大きく、今後も計画額と決算額の規模是正が求められるのは必至であろう。そうした事態を避けるためにも、地方団体全体として投資的経費の計画額に見合った予算計上をすることが必要であり、著しく計画を下回って予算計上している地方団体には総務省は実効ある是正の指導を怠ってはならない。

 

3、 平成1664日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」が閣議決定されたが、その中で、平成18年度までの三位一体改革の全体像を平成16年秋に明らかにし、年内に改革案を決定することとした。税源移譲は概ね3兆円規模を目指し、前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請した。819日、内閣府から地方6団体への要請に応え、地方6団体の会長会議において改革案がとりまとめられた。

 

4、 平成16825日 自民党政調総務部会・地方税財政改革PT合同会議の場において、地方6団体の「国庫補助負担金等に関する改革案」について地方6団体からヒアリングが行なわれた。全国知事会会長梶原岐阜県知事の説明があった後フリートーキングに入ったが、冒頭私は発言を求め、「我が国の地方団体は、国政の主要な担い手、実施主体である。国政に地方の意向を適切に反映させることは、かねてより我が国地方自治の最大の課題の一つであったが、国庫補助金整理という最も困難な課題について今回実現し、地方6団体がきちんとそれに応えたことに敬意を表したい。いろいろの意見がある中で内閣の求めに応じ地方6団体が6団体共通の案を作成したことは、地方6団体が単なるサロンないし要望団体にとどまらず、とりまとめ能力があることを内外に示したこととなる。国と地方が共通の課題についてともに協議するということは、国と地方の関係にとって画期的で、両者の関係は新たな段階に入ったことになる。私自身改革案の中身自体については大いに意見があるが、それはともかく、国、地方を通ずる行財政改革は、国政の大きな課題。国と地方が新しい時代の幕開けにふさわしい改革を実現するよう、政府がイニシアティブをとって相互信頼の下に各省と地方との間に真摯な協議がなされるよう期待する。」と地方6団体の労を多とした。

 

5、 825日 同時刻に自民党政調環境関係合同会議が開かれ、17年度環境予算概算要求とともに地方6団体の「国庫補助負担金等に関する改革案」に掲げられている「移譲対象補助金」について審議され、廃棄物処理施設整備費補助金1,167億円の廃止が問題とされていた。私は出席するや発言を求め、「ごみ処理施設は、迷惑施設であり、周辺の反対が多く、設置自体困難であり、国庫補助金の見通しが得られたということでようやく設置される実情にある。近年施設整備費が大型化しており、国庫補助金なしには建設が難しい。ダイオキシン規制に対応するため環境省の努力もあってごみ処理施設を整備したばかりの市町村が多いため、今回廃止リストに載ったものと思われるが、国庫補助金がなければ廃棄物処理施設の整備はおぼつかない。国として循環型社会の構築を責任をもって進めていくためにも、廃棄物処理施設整備費補助金の存続は欠かせない。」と主張した。

 

6、 翌826日 17年度概算要求のための自民党政調国土交通部会関係合同会議が開かれ三位一体改革への対応が議論された。私は発言を求め、「三位一体改革の最大の問題点は、初めに4兆円の削減ありきである。しかもその根拠が明らかでない。参院選の結果を踏まえ、地方再生、地域再生の観点から改革の進め方、内容をまず見直すことがここで考えられなければならない。地方6団体は、内閣の求めに応じ、3兆2千億円を積み上げて改革案をつくったのであるが、その内容をみると相当に無理していることが明らかである。そもそも3兆円の廃止は現実的でない。災害対策が求められる中で河川、砂防事業のほとんどを廃止しようというのも現実的でない。三位一体改革は、地方に拒否権や決定権を与えたものでなく、地方の意見を国政に適切に反映させるということ。補助負担金の整理をするかしないかは、国の責任が全うできるようあくまでもその内容の決定は国の責任、政治の責任で行われるべきは当然のこと。党は責任をもって政府が勝手に物事を決めないよう正しく影響力を行使してもらいたい。」と要請した。地方6団体の改革案によれば、国土交通省関係の廃止補助金は、公共事業関係で河川事業の7割、砂防事業の9割が廃止されるほか、流域下水道、公営住宅等で約6,450億円に上り、治水事業等の推進に重大な支障となるものであるこというまでもない。近年、我が国の気象は局地的振幅が激しく、また今年の台風が10回も本土に襲来するなど、河川関係事業は災害の発生に応じて機動的・集中的に事業実施する必要性が一段と増してきている。このような時に、河川事業補助金を廃止して国として治水、災害復旧の責任をどう果たし得るのか、また、都道府県が任されたとしてもその責任を果たし得るのか。そもそも財務省は公共投資関係の補助金についてはスリム化が基本であり、建設国債を財源としており移譲すべき税源がないから税源移譲の対象とはしないといっている。実際、16年度改革の公共事業費削減についても税源移譲は行っていない。治水対策は国としての基本的な責務であり、災害予防と災害復旧も勿論一体不可欠のものであるので、国として治水の責任を全うできるよう国庫補助金を堅持する必要がある。

 

7、              中学校教職員の義務教育費国庫負担金の廃止、一般財源化は、最も先鋭な対立となっている。当然のことである。私は、1026日の自民党文部科学部会で発言を求め、次のように指摘した。理屈としては、義務教育費国庫負担金を廃止しても、法律でナショナル・スタンダードを設定し、地方にその遵守を義務づけ、財源は一般財源として付与すればよいではないかと言い得る。しかし、問題は財政論でなく、実効性である。法律で基準を設定して義務教育費国庫負担金制度を廃止しても、当面は直ちに問題場面が出てくることはないと思われるが、早晩、財政力や県政の重点のおき方等を反映して地域間に大きな格差が生じるのは免れ得ない。一方、地方交付税は今後ますます窮屈となってくるため、国庫負担金がない分野には一段の効率化が求められる。義務教育費とて例外ではない。結果として、法律で規定をおいたとしても法律の基準を達成しないケースが生じることも十分あり得る。その場合、国が法律に違反するとして実効ある指導ができるか。否である。現行の地方自治法制の下においては、地方団体が違法な行為を行っても国としてこれを有効に是正する手段を持たない。そもそも戦後の地方自治法制においては、他国と異なり、適法性確保の規定がないのである。我が国の地方自治法制の下では、義務教育の根幹(機会均等、水準確保、無償制)を国の責任として堅持しようとするならば、そのための財源保障を国として明確に行わなければ義務教育費の確保は得られないのは当然のことである。一方、地方団体においても、今後地方財政が困窮していく中で、安定した義務教育費を確保しようとするならば、義務教育費が自動的に国庫負担される、地方にとっても最も有利な国庫負担制度を何故に今、手放そうとするのか私には理解に苦しむところである。義務教育費国庫負担制度は今回手放したら、再度望んでも、一度廃止した国庫負担金の復活は容易ではない。

 

8、              国と地方の三位一体改革は、9月から10月にかけて4回の「国と地方の協議の場」が持たれ、1028日に各省の検討結果を提出。11月半ば目途に三位一体改革全体像の取りまとめが予定されているが難航必至である。地方団体向け国庫補助負担金は、平成16年度予算で20.4兆円あるが、そのうち国庫負担金が16.8兆円を占め、国庫補助金は3.3兆円に過ぎない。また社会保障関係費が11.7兆円を占めるが、そのうち11.1兆円が老人医療、市町村国保、生活保護、介護などの社会保障関係負担金である。また、義務教育費負担金が2.5兆円である。要するに国庫補助負担金整理4兆円が削減対象としてどういう根拠に基づく数字であるか明らかでなく、また説明もされていないことが混乱の最大の原因である。国庫補助負担金整理の考え方、指針が全くなく、地方に改革案をつくらせたのも問題である。国庫補助負担金は、国として政策を実行し、政策誘導するための有用な手段である。また国の責任を全うする手段でもある。改革案がこうした国の責任を全うできなくなるようなものとなってはならない。


9、 111日 自民党政調「三位一体改革に関する政調正副会長、関係部会合同会議」が開催された。私はひととおり議論を聴いた後発言を求め、次のように発言し、カナダバンクーバーで開かれる海事関係閣僚会議に出席のため、成田に向かった。
 「三位一体改革の理念は良いのに、このように先鋭の対立が起きる。なぜか。それはひとえに国庫補助負担金削減3兆円ありきによる。地方に対する国庫補助負担金20.4兆円のうち、国庫補助金は3.3兆円に過ぎない。それを3兆円4兆円削るというのがそもそも無理な話。そんな案はまともにつくれるわけがない。地方6団体は無理して案をつくったのだ。また、地方6団体は、機械的、自動的に国庫負担される、最も地方自治的で最も有利な国庫負担制度を何故に今手放そうとするのか私には理解に苦しむところ。本当に3兆円を削減したら、各省はその責任を全うできない。地方団体は財政困窮となり、国民へのサービスは滞る。要するに皆が困る事態となる。
 どうしたら良いか。この際、3兆円は横に置いて、削減額にこだわらず、自民党として国民に説明のできる、責任ある筋のとおったものだけを削減することとすべきである。是非ともそのようにお願いしたい。」

 

10、 119日夕、小泉総理、細田官房長官、杉浦・山崎両副長官出席の下に大臣政務官懇談会が開かれた。各大臣政務官が自由に意見を述べることとなったが、私は小泉総理に対し次のとおり申し上げた。「小泉総理に2つ感謝申し上げたい。一つは道路公団民営化である。おかげで私の選挙区の中部横断自動車道が新直轄に選定され、停滞していた中部横断自動車道の整備が軌道に乗り、しかも高速道を無料で使えることとなった。しかしながらこともあろうに地元の市長は、新直轄選定は私の尽力によるものであることを十分承知しながら、私ではなく民主党の国会議員を呼んで祝賀会を開き民主党のおかげで中部横断道が新直轄に選定されたと宣伝している。今度国土交通大臣政務官を拝命したので、民主党支持の市長といえどもそういう背信的なことは言えなくなった。ご配慮を感謝したい。」同席した小泉総理、細田官房長官、両副長官、全省庁の大臣政務官の面々は、一様に私の選挙区の異様さに皆驚いていた。次いで続けた。「次に三位一体改革についてである。三位一体改革の理念は良いのに、なぜ国論を二分するようなことになっているのか、問題は3兆円という金額の一点につきる。「地方分権」は、昭和54年、私が地方制度調査会答申に書いてはじめて政府部内で使われるようになった言葉であり、私は以来地方分権の推進に努めてきたが、地方分権が国を壊してはならない。地方6団体は必ずしも自らの改革案をよしとしていない。3兆円国庫補助負担金を削減したら各省は国政の責任を全うできない。三位一体改革は、3兆円という額ではなく中味の筋の良さで分権の実を挙げることとすべきである。よろしくご配慮を賜りたい。」
 翌11月10日、細田官房長官から昼食に誘われ三位一体改革の処理について意見を求められた。私は、パッケージとして処理すべきだとして、種々意見を申し上げた。


11、 国と地方の三位一体改革については、1116日、党三位一体改革関係部会合同会議において「具体化の作業指針」、1118日には政府・与党において「基本的枠組み」が取りまとめられた。その後この提言に沿って三位一体改革の具体化作業が進められ、1126日、政府・与党は、三位一体改革の全体像を決定した。

 

12、 三位一体改革の全体像は次のとおり。国庫補助負担金改革については、平成17年度及び18年度予算において、3兆円程度の廃止・縮減等の改革を行う。税源移譲は、概ね3兆円規模を目指す。地方交付税は、平成17年度及び18年度は、地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保するものとされた。

 

13、 国庫補助負担金改革の内容は、義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するとし、平成17年秋までに中央教育審議会において結論を得るものとするが、平成17年度予算については義務教育費国庫負担金の8,500億円程度の減額(暫定)のうち半分4,250億円を減額する。社会保障については、国民健康保険について地方への権限委譲を前提に、都道府県負担を導入し7,000億円を削減する。公共等その他については、国の関与の必要のない小規模事業等については廃止・縮減等を行う。公共投資関係の補助金の交付金化については、省庁の枠を超えて一本化するなど、地方の自主性、裁量性を格段に向上させる。地域再生の取り組みにおいても三位一体の改革に資するものとなるよう留意する。

 

14、 平成17年度及び18年度の国庫補助負担金改革の合計額は28,380億円、うち税源移譲につながる改革は17,700億円、スリム化の改革は4,700億円、交付金化の改革は6,00億円となった。また税源移譲額は16年度分を含め24,160億円となった。

 

15、 1126日の政府・与党による三位一体改革の全体像決定を受け、全国知事会会長梶原拓岐阜県知事は、全体像の受け入れを表明。全国知事会など地方6団体は「首相が真摯に対応したこと、官房長官らが中心となって地方交付税・税源移譲で鋭意調整したことには敬意をし、とりあえず、政府与党合意を受け止める」とのコメントを発表した。

 

16、 国と地方の三位一体改革は、3兆円という目標額に国と地方双方ともに悩まされたが、一方で国の責任を全うしつつ、他方で地方分権推進上画期的な成果を挙げた。国の補助負担金が何兆円のレベルで大幅な整理合理化が行われ、地方への税源移譲が基幹税たる所得税から住民税へ大幅な税率調整を伴って実施されることとなったこと、より使途の自由度が確保される一括交付金化が、広汎な分野で一挙に実現をみたことなど我が国地方自治の歴史にかつてなかったことである。しかも、これまでサロンないし要望団体に過ぎなかった地方6団体であるが、三位一体改革という国と地方の根幹にかかわる問題について、正規に「国と地方の議論の場」が合計7回にも及び持たれることとなり、国政への地方の意向反映という地方自治の最大の課題が図らずも実現し、実質的にも対等な議論ができたことなどすべて画期的なことであった。しかも残された生活保護費や児童扶養手当を検討する協議機関に地方団体の参加がうたわれるなど、国と地方の協議の場が継続されることとなった。また、地方の最も心配であった地方交付税について、改革期間中の交付税確保がうたわれたことなど、地方の得たものは大きい。一部の地方の首長や識者などが不満を述べているが、それは地方にとって得られたものの大きさを正しく理解できていないものと言わざるを得ない。それはまた、これまで60年におよぶ国と地方の関係においていかに得られたものが少なかったかという地方自治の歴史を省みないことでもある。今回の三位一体の改革の舞台はそもそも地方でなく国が設定したものであること、また今回は地方よりもむしろ政府・与党、各省庁において真摯かつ苦悩の取り組みが見られたことを見逃してはならない。私は129日開かれた自民党政調総務部会において上記のような趣旨を述べ、地方団体関係者においても今回の三位一体改革の意義を正しく理解するよう求めた。
いずれにせよ、今回の三位一体改革における政府・与党及び地方6団体関係者の尽力を多としたい