| <平成15年度税制改正について>
1、 12月13日、自民党そして与党の平成15年度税制改正大綱が決定された。デフレ 不況下で税収不足に苦しむ中で、初年度差し引き1兆8千億円の先行減税により経済 活性化を目指すものとなった。 2、 まず、日本経済の競争力強化のため、思いきった研究開発減税とIT投資減税措置 がとられた。規模はそれぞれ6,000億円程度に上る。次いで、中小企業税制として、中 小企業の経営基盤の強化を図るため、研究開発促進税制において、中小企業に対し、 一律でより高い税額控除率(15%)を設定するとともに、ベンチャービジネスの育成、同 族会社の留保金・交際費課税の緩和等により、やる気と活力を回復する措置を講じた。 私も党税調の場で研究開発減税、IT投資減税及び中小企業振興税制の必要性を訴 えた。なおこの問題は、全員賛成で専らその規模が問題とされたものであった。 3、 相続税、贈与税については、高齢者の保有する資産を次世代に円滑に移転させる ため、相続時精算課税制度が創設され、贈与税の非課税枠は2,500万円、住宅取得資 金の贈与の場合は3,500万円の非課税枠とされた。また、金融・証券税制では、貯蓄 から投資へと個人投資家の積極的な市場参加を促すため、上場株式等の配当及び公 募株式投資信託の収益分配金ならびに上場株式等の譲渡益について今後5年間は10 %の優遇税率が適用されることとした。 4、 土地税制においても、登録免許税及び不動産取得税の大幅な軽減、特別土地保有 税の凍結など土地流通に関する税負担が大幅に軽減された。また、 固定資産税につい ては現行の負担調整措置の継続が決まった。 5、 一方、個人所得課税については、広く公平に負担を分かち合うとの基本的な考え方 の下に配偶者特別控除(上乗せ部分)が廃止され、消費税については、消費税に対す る信頼性、透明性を向上させる観点から事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用 上限が大幅に引き下げられた。またタバコに新たな負担を求めるとともに、酒類間の負 担格差を是正する措置が講じられた。 6、 平成15年度税制改正を決める自民党税調は、11月13日の税調総会で幕開け、 以降12月13日の税制改正大綱決定まで1か月の集中審議が行われた。自民党税調 の場は小委員会でも毎回100名を超える自民党議員が出席し、激論の中でまさに政治 の役割である税制を決める場である。当然、党税調の場での議論は、個々の議員の評 価にもつながるものとなる。そこで今年、激論が交わされたのが、法人事業税に外形標 準課税を導入することについてであった。外形標準課税の導入は、4年越しの議論であ り、昨年の税制改正大綱でも「景気の状況等も勘案しつつ、平成15年度税制改正を目 途にその導入を図る。」と明記され、本年度が決着の年と見られていた。 7、 私は、景気の現状はまことに厳しく、不景気のこの時期に中小企業に外形標準課税
「 法人事業税の最大の問題点は、日本を代表する多くの大企業が都道府県から多は導入すべきではない。かといって党税調では、15年度税制改正を目途に導入を図る とされていること、また、党税調の場で来年もまた同じ様な議論を繰り返すことも無益な ことであると考え、今年は対象から中小企業を除いて外形標準課税の導入を決着すべ きものと結論した。そうした考え方に立って、今年は党税調の審議が始まる前から税務 当局その他関係方面に、この際、中小企業を除いて外形標準課税導入を決着させるべ きであると強く主張してきたところであった。そうした基本的な立場に立って、11月21日 の党税調小委員会において次のように発言した。 大な行政サービスを受益しているにもかかわらず、赤字が故にこれに見合った法人 事業税を一銭も負担していないことにあります。そのことが、本来応益課税たる法人 事業税の空洞化を招き、国民の間に負担の不公平感を著しく助長しているのであり ます。都道府県の基幹税目でもある法人事業税の姿をこのまま不公正の状態に放 置してはおけません。 一方景気の現状はまことに厳しく、中小企業の皆さんが課税方式の変更に不安 を抱くのもこれまた当然のことであり、中小企業の立場は最大限に配慮されるべき であります。 導入反対の意見をいろいろ拝聴いたしましたが、いずれも技術的に調整可能な問 題であり、外見標準課税導入の妨げとはならないものであります。たとえば、増税で はないかという批判は、税率調整の問題であり、減税とすることでも対応できますし、 賃金課税でないかという批判についても、さらに一段の工夫も可能であります。ま た、この不景気なときに導入するのはいかがかという批判については、それは経過 措置をどう書くかの問題であり、これはいかようにも書けるわけで、どのようにも対応 が可能であります。 要は大企業を中心に負担の公平が著しく損われていることを正すことが必要であ り、景気が厳しい時であるだけに中小企業に最大限配慮した大胆かつ柔軟な措置を 講じることにより、今回、外形標準課税導入の決着を図っていただきたい。」という内 容であった。ここで、「中小企業に最大限配慮した大胆かつ柔軟な措置」とは、景気 が厳しい時であるだけに思い切って中小企業を対象から除外して外形標準課税を 導入せよという意味であり、わかる人はわかっていただけたと思っている。実際、私 の発言を受けて税調幹部の一人は、「なるほど、大胆かつ柔軟な措置か」と繰り返 し、肯いた次第であった。端的に中小企業を除外してといわなかったのは、未だ党 税調審議が始まったばかりであり、党税調審議の中で自然に中小企業除外の流れ を作ったほうがよいという助言があったからでもあった。この時点で中小企業を除外 して外形標準課税を導入せよと主張したのは、私一人のみであった。 8、 続く外形標準課税集中審議の日には、さらに進めて次のように論じた。
外形標準課税を導入すれば、こうした大企業が適正な税負担をすることとなり、「 法人事業税の税収構造を見て一目瞭然わかることは、法人事業税は、 一部の 大法人が税収のほとんどを担っている税であって(8%の法人が98%の税額を負 担している)、課税方式を変えてもおそらくその基本的な税収構造は変わらないで あろうということであります。資本金1億円超の法人は3.1万社ありますが、その 半分の1.6万社の利益法人が法人事業税の3分の2の税額を負担し、一方、半分 の1.5万社の赤字法人は、1.6万社の利益法人にほぼ見合った負担能力がありな がら、税負担を一銭もしていない、このことが問題なのであります。 税収中立であれば、額に汗する利益法人は当然減税となり、中小企業は大幅減税 となります。導入にあたって中小企業に最大限の配慮をし、ないしは中小企業を除 外したとしても、全体として負担の不公平は是正され、税収は安定することとなり ます。 不景気な折、中小企業の方々がいささかも心配をすることのないよう、中小企
業には思いきった最大限の軽減措置ないし除外措置を講じて、今回、外形標準課 税導入の最終決着を図っていただきたい。」 9、 12月10日党税調小委員会の場に、これまでの税調の議論を踏まえ、総務省から対
象法人は資本金1億円超の大法人とし、平成16年度から外形基準を4分の1導入す る旨の案が提出された。私は、外形標準課税の導入は、資本金1億円以上の大企業に 見られる著しい負担の不公平を是正することが最大の眼目であり、中小企業の問題で はない。1億円以上の大企業が多少とも応益負担をするのは、地域感情、国民感情に も合致する。その意味で中小企業をはずして外形標準課税を導入するという案は妥当 な結論である。不況に苦しむ中小企業者はこれで内心ほっとし、歓迎していると賛意を 表し、あとは税調幹部に一任すべきと主張した。 今回の外形標準課税導入は、連日、賛否相きっこうする白熱の議論が展開され、予 断を許さない状況でもあった。そうした中で冷静沈着かつ絶えず穏やかに議論を整理 し、さばいていった宮下創平税調小委員長の議事運営振りはまさに名小委員長の名に 恥じぬものがあったと深く感服した。そして最後は宮下創平小委員長の毅然とした議 事運営、そして税調のドン山中貞則最高顧問の一喝で外形標準課税の導入が決定し たのであった。今回の外形標準課税導入の決着に果たした宮下創平党税調小委員長 の役割はまことに大きく、宮下創平小委員長の名は、今後戦後地方税財政史にさん然 と不朽の名をとどめ、その功績は全国の地方自治関係者の間に今後ずっと語りつづけ られるであろう。 10、 法人事業税の外形標準課税導入は、昭和24年シャープ勧告で付加価値税の導入 がうたわれて以来その実現は地方の悲願であったが、半世紀を経て、やっと地方団体 が法人税の従税でない、自前の法人課税の税制権限をもったこととなる。地方の時代、 地方分権の時代を象徴する税制でもある。都道府県の基幹税目である法人事業税収 の安定も図られることとなる。 それだけに、都道府県におかれては、今一度地方自治の本旨に立ち返り、責任を十分に 認識し、地域経済と住民に十分責任を持った県政運営に努めてもらいたい。 なお、今回の外形標準課税導入が中小企業を除外して決着したことは、中小企業に ついては、当分、外形標準課税を考えないということであり、中小企業サイドが望まな い限り、今後当分、中小企業について外形標準課税導入が議論されることもない。中 小企業の皆さんは安んじて本業に専念してよいと思う。 |