151回-衆-内閣委員会-13号 2001/05/23
○岩崎委員 自由民主党の岩崎忠夫でございます。
 参考人におかれましては、大変お忙しい中を御出席いただきまして、それぞれのお立場から極めて示唆に富みました大変貴重な意見を賜りまして、ありがとうございました。
 では、早速質問に入らせていただきます。

 まず、運転免許証の更新制度について、長江参考人、井手参考人にお伺いをしたいと思います。
 運転免許証の更新制度は、我が国運転免許適齢人口の約七割、七千四百万人を超える運転免許保有者を対象とするものでございます。交通安全の確保にとりましても、また国民の利便にとりましても、ないがしろにできない大変重要な問題でございます。そのあり方につきましては、改めて規制緩和と言うまでもなく、交通安全の確保が損なわれない範囲内で、国民負担が過度にならないよう負担軽減が図られることが肝要であります。

 そこで、更新制度の核心であります運転免許証の有効期間についてでありますけれども、諸外国の例を見てもまちまちでございまして、近年制度改正が行われたイギリスにおいては十年、ドイツにおいては五年ということで、必ずしも一定していないようでございます。事故防止に果たします交通安全の重要性でありますとか、あるいは定期的な適性チェックの必要性などといったようなことも勘案いたしますれば、改正案にございます有効期間の原則五年というのは妥当なような気もいたしますが、長江参考人は、運転免許制度に関する懇談会の委員もなさっておられるというように伺っております。運転免許証の有効期間についてはどのように考えていったらよいのか、その基本的な考え方についてお教えいただければ幸いと存じます。

 また、井手参考人は、免許更新は運転者教育の唯一の機会であり、安易に免許証の有効期間を延長すべきではないとのお考えのようにお伺いいたしましたが、原則五年という免許証の有効期間、これは長過ぎるとお考えでございましょうか、お伺いをしたいと思います。

○長江参考人(日本大学名誉教授) 私、全く私見を申し上げますが、私が免許を取りましたときには更新が二年でした。その後三年になりまして、今、優良運転者のゴールドカードができたときに五年になりました。ずっと前から私は、もう少し長くてもいいんじゃないかということと、今お話しのその間にいろいろな情報を伝えるということとはちょっと違うんだろうと思います。

 もちろん、免許証を保有しておられる方が運転あるいは法規に関するいろいろな情報をとるのが免許更新時の講習だけということではないような気がいたします。例えば安全運転管理者だとかいろいろな制度がありまして、しかも最近は講習が、試験場へ行かなければ、あるいは更新をするところへ行かなければだめだということでもない。むしろ講習の質を上げるという努力をされていますので、そういう意味でいうと、じゃ五年がどうなのかというと、多分これは、ゴールド免許が実施されてからの実績ということがあって提案をされているんだろうと私は解釈をしております。通常では問題ありませんし、何か問題があった人はその都度個別にそれなりの講習を受けるというようなことの方がより効果的ではないかというふうに考えております。

○井手参考人(全国交通事故遺族の会会長) 私は、運転免許の期間の問題ではなくて、問題は、適正に行われているかどうかが問題ですから、今の運転講習制度のあり方というものも含めてもう少し検討した方がいいのではないかと思います。

 あと、五年ということですが、これはできれば短い方がいいと私は思っております。

○岩崎委員 どうもありがとうございました。
 それでは、今話にも出ましたが、優良運転者の優遇制度の考え方につきまして、長江参考人、井手参考人にお伺いしたいと思います。

 大変個人的なことを申し上げて恐縮でございますが、実は私は昭和三十六年に運転免許証を取得いたしまして、以来四十年間、無事故無違反であります。ところが、前回、誕生日の日にふと気がつきまして、ひょっとしたらことしが免許の書きかえの年かなと思って確かめましたところ、案の定、有効期限の当日に当たっておりまして、いわゆるうっかり失効となってしまいました。その点、今回免許証の更新期間が、誕生日の一カ月前から一カ月後にまで二カ月ということで延長される改正が行われますことは、大変よい改正だろうと思っているわけであります。

 うっかり失効になりまして一番残念なことは、うっかり失効後の免許取得は更新ではなく新規取得の扱いになってしまいまして、当時三十数年間、無事故無違反の輝かしい優良運転者の経歴が一挙に消滅してしまったことであります。この点も今回の改正で一部手当てがなされるようでございますが、それはともかくとしまして、今回の改正で免許証の有効期間が、原則三年なりあるいは五年が、原則五年ということになったわけであります。こういうようなことによりまして優良運転者のメリットが著しく減じられたことになるわけであります。

 そもそも、優良運転者の優遇措置が安全運転を促すために有用であるといたしますならば、優良運転者にはっきりメリットがわかるような措置、例えば免許証の有効期間を、原則五年でありますが、それを七年にするとか、めり張りがきいた規定にした方がよいのではなかろうかというようにも考えるのでありますが、交通安全上、優良運転者の優遇措置とはどこまで許されるのか、あるいはどのように考えたらよいのか。長江先生は今、よきドライバーをつくる奨励策の一つとしてこの優良運転者の優遇制度をとらえておられるというように話されたわけでありますが、御所見を伺いたいと思います。

 また、井手参考人にお尋ねしたいと思いますが、全国交通事故遺族の会では、警察庁長官に対します意見書の中で、免許証の更新は、運転者の安全に対する自覚の節目と運転適性の定期的チェックであって、無事故であるとか無違反であるとかで延長されたり免除されるべきではないとされておるのでありますが、優良運転者の優遇措置を考える上でも大変重要な視点だと思いますので、井手参考人に再度、優良運転者の優遇措置についての御意見を賜りたいと思います。

○長江参考人 私は、実はゴールド免許で昨年書きかえをいたしました。七年になっていればよかったなと思っておりますけれども、実はゴールド免許ができたときに、メリット制であるという議論がありました。通常は三年だけれども、優良運転者だから五年にするというふうな話がありましたが、たったそれだけのことだったのです。今議員お話しのように、私は何らかのメリットがあったらいいと思いましたが、実はゴールド免許が始まって、六本木でまず、ゴールド免許を持っている人は有料駐車場の料金を割り引くという、民間は既にそういうことをやっております。

 やはりこの辺のところも、多くの人が、すべての運転者が優良運転者になっていれば事故は起きないはずですから、そういうふうな意味で、優良運転者の数をふやしていくということをぜひひとつお考えいただいて、お手当ていただければありがたいと思います。

○井手参考人 優良運転者については先生の説に賛成であります。

○岩崎委員 どうもありがとうございました。
 次に、大型二種免許等を受けようとする者に対する応急救護措置に関する講習について、長江参考人にお伺いをしたいと思います。

 交通事故による死傷者につきましては、救急車が到着するまでの間に、事故当事者等により、迅速かつ適切に応急救護の措置が講じられることが必要であることは言うまでもありません。救命手当ての対象となります心肺停止者の蘇生率は、心肺停止後、分刻みで低下しまして、心肺停止五分後の蘇生率は二五%にまで落ち込むと言われております。一方、救急車が現場に到着するのに要する平均時間は六・一分であります。その間をつなぐ応急救護の措置がどうしても必要なゆえんであります。

 今回の改正で、大型二種免許等を受けようとする者は、公安委員会が行う応急救護措置に関する講習等を受けなければならないとされていますが、交通事故の実態を考えますれば、むしろ遅きに失した感さえ受けるのであります。アメリカのよきサマリア人の法、グッド・サマリアン・ローのような法制を持たない我が国におきましても、応急手当てを施した者は、原則としてそれに伴う責任を問われることはないともされているわけであります。

 市町村の消防機関が平成五年から行っております応急手当ての講習は、年々受講者がふえまして、平成十一年には八十三万九千人を数えております。この消防機関の行います普通救命講習でも、心肺蘇生法など実習を主体といたしまして三時間をかけて行われます。上級救命講習では八時間の講習が行われております。現在、第一種免許を受けようとする者が受講する応急救護措置に関する講習も、実技も含め三時間であります。

 そこで、今回の改正によります応急救護措置に関する講習でどの程度に充実した講習が行われたらよいのか、長江参考人、お考えがございましたら、よろしく御教示願いたいと思います。

○長江参考人 今、議員がおっしゃられたとおりだと思いますが、実はもう一つ、第二種免許の教習所での教習をするという問題のときに、一種免と二種免と何が違うのかという話がありました。

 そういう中で最も大事なことは、いわば、自家用車であれば自分の知っている人、家族だとか友人だとかを送るわけですが、実は、二種免というのは不特定多数の方を乗せてその命を預かるということになります。そうしますと、他人の命をきちんと守るという心構えをどういうふうにつくるか、それから万が一何かがあったときにどういうふうに応急処置をするのか、そういうことをいわゆる教習課程の中で二種免を受けようとする人たちにきちんと心に決めてもらうということの一つに、やはり自分で手を下し、汗を流すということが大事じゃないのか。

 ですから、救急救命というのを単にテクニックというふうにおとりになると、多分その効果は出てこないだろう。だれのためにやるのか、なぜやるのかということが受講者の人たちにわかっていただければ、当然、周りの人の命だとかそういうことも気遣いして運転をしてくれるだろう。そういう意味で、実は、文字で書いてしまいますとこれをやれということになりますが、問題は、やる心というものをどういうふうにとらえるかということが非常に大事だと思います。

○岩崎委員 どうもありがとうございました。
 二種免許を受ける者は特に心して、心を込めて応急手当の講習を受けるべきだと、しかとわかった次第であります。

 次に、障害者に係る免許の欠格事由の見直しにつきまして、福井参考人、井手参考人にお伺いをしたいと思います。

 平成十一年八月の障害者施策推進本部決定では、資格・免許制度の障害者に係る欠格事項については、障害者が社会活動に参加することを不当に阻む要因とならないよう、その見直しに当たっては、現在の医学、科学技術の水準等を踏まえ、再検討するものとされておりますが、今回の道交法改正では、障害者に係る免許の欠格事由を廃止し、障害者でも試験に合格すれば免許を与えることとされておるわけであります。ただし、一定の病気にかかっている者については、政令で定める基準に従い、免許を与えず、あるいは免許を取り消すことができることとされております。

 この問題は交通安全の確保と人権に係る問題でもございまして、一方で障害者が社会活動に参加することを不当に阻むことがあってはなりませんが、同時に、交通安全の確保を図るという観点も欠かせません。ただいまの参考人意見陳述では、井手参考人は、障害者の人権への配慮も人命の犠牲を伴わないことが前提となるという趣旨の御意見のように伺いましたが、今回の改正案の考え方について、改めて福井参考人及び井手参考人のお考えをちょうだいいたしたいと思います。

○井手参考人 障害者の社会参加という意味での障害者の人権を配慮するということに対しては賛成でありますけれども、実は、例えば一年か二年ぐらい症状がなければ与えてもいいんだということは、医学的に非常に不安であります。例えば、私の遺族の会の会員で、二十年間何も症状はなくて突然意識障害を起こして、それで死亡させられたという方があります。ですから、一年か二年で、それで免許を与えてもいいんだというのは、非常に短絡的なことではないかと思います。

 ただ、長期的に障害者の人権を守るというか、社会参加を促進する意味で、セーフティーネットといいますか、いわゆる自動車の構造に、例えば意識障害が起こった場合には車が自動的にとまるような、そういうふうな技術革新といいますか、そういうものを取り入れてもらいたいと思うのです。実は、今回はてんかんのことが問題になっておりますけれども、意識障害を起こすのはてんかんだけではないのです。先ほども申し上げましたように、糖尿病でも高血圧でも循環器障害でもあるわけでありますから、当然そういうセーフティーネットを早く構築していただきたいというふうに思っております。

○福井参考人 ただいまの御質問でございますが、私、過日のこの内閣委員会も実は傍聴させていただいておりました。

 おっしゃるように、いわゆる障害者の人権を守ることと交通の安全上人命を守ること、これは対置して考えるというか、ごく当然のことでございますよね。ですから、私も今意見の中で、その辺は力を込めて言ったつもりでございます。欠格条項ということは、つまり、障害を持っている人には実はこういう権利は与えないんだよということを国がみずから宣言しているわけでして、いわゆる国際障害者年の完全参加と平等ということからいっても、実は今の二十一世紀の時代、これはできるだけ早くやめようではないかということで、私ども当事者にとっては実は遅きに失したと思っているぐらいのことでございます。

 ですから、つまり、どうすれば重い障害を持った人も参加できるだろうか。それには、医学の進歩や、いろいろな機器の開発や、いろいろな公的な援助や、そういうものが重なって、今私たちは、欠格条項の見直しが大きく打ち出されている中で、私たちの権利も保障していただきたいと言っているわけでございますので、その辺の一番根源的なことを考えていただきたいというふうに思います。

 それから、私ども、てんかんにかかわりますことにつきましては、今も申し上げましたように、いろいろと政令等で細かく決めていただくことはもちろんでございます。そこでこそ、私たちの人権が守られ、安全が守られることが両立していくのだと、覚悟といいますか、しっかりと受けとめているところでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 お答えになりましたでしょうか。

○岩崎委員 どうもありがとうございました。
 最後に、悪質、危険運転者対策の強化につきまして、井手参考人、長江参考人にお伺いをしたいと思います。

 交通事故がふえ続けました四十年代からずっと、無免許、酔っ払い、スピード違反などに対しまして、交通三悪あるいは交通凶悪犯としてその追放が叫ばれてまいりましたが、近年、救護義務違反、酒酔い運転、暴走族の共同危険行為など、悪質で危険な違反に対します罰則が軽過ぎるとしまして、悪質、危険な違反について厳罰を求める機運が急速に高まってきておるわけであります。

 今回、これらの悪質、危険な違反者に対します罰則が引き上げられることになりましたが、そもそも、懲役刑はともかくとしまして、我が国の罰金刑の量刑は、犯罪抑止効果を上げるには余りにも低過ぎるとも考えられるのでありますが、交通違反に関する罰則の事故防止への抑止効果、あるいは罰則の見直しをどのように考えていくべきなのか、井手参考人、長江参考人、一言ずつお答えを賜りたいと思います。

○長江参考人 先ほど私の意見の中で申し上げましたが、やはり人間とは弱いものですから、何らかの罰則があるよと頭の中にあればいいんだと思いますが、ある方が、これは特定の地域のところですが、駐車場を借りるよりも駐車違反で捕まる方が年間では安くなるというようなことをドライバーが言っている。これはもってのほかだろうと思います。

 ただし、基本的には私は、刑事罰と行政罰それから民事の責任、これはそれぞれがバランスがとれていなければいけないんだろうと思いますが、本当に迷惑になるものはなくそうとすればたくさん払わなければいけないというふうに周知すれば、それが減ってくるのが世の中じゃないかなと考えております。

○井手参考人 現在の法律が非常に昔の、明治時代の法律を適用しているというところにも問題があるように思うのですね。ですから、これは立法府の責任ですから、新しい法律をつくっていただきたいと思います。いつまでも業務上過失致死でいいのか、今の時代、今の車社会に合っているのかということを問い直して、立法府の責任において刑罰の問題はきちっとしていただきたい。現在、刑事罰とか行政罰とか民事罰が非常に希薄になっておりますので、これをもう少しはっきりとさせていただきたいと思っております。

○岩崎委員 以上で質問を終わります。参考人におかれましては、それぞれ貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。